理事長 和田 英浩
平素より、当協会業務につき、格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、令和5年度を振り返りますと、春闘での賃上げ率は30年ぶりの高水準を達成しましたが、物価高騰に賃金が追い付かない状況で、実質賃金の減少期間は過去最長となりました。また、人手不足はバブル期以降、最も深刻な状況に陥っており、人手不足関連の倒産件数は過去最多を更新しました。生産年齢人口が減少するなか、人的資源の希少性、重要性がより高まっています。一方、日経平均株価は史上最高値を更新し、企業の業況や収益は好調でしたが、賃金や投資に充分に結び付かず、歴史的な物価高騰が消費を圧迫し、内需は力強さを欠くこととなりました。新型コロナが5類感染症に移行し、制約が解消された国内の景気は、緩やかな回復基調を取戻したものの足踏み状態が続いています。
金融環境につきましては、日銀が3月にマイナス金利を解除するなど金融政策の枠組みを見直し、緩和的な環境を維持しながらも金融正常化に向け踏み出しました。賃金と物価がともに上昇する好循環が持続し、日本経済が「失われた30年」といわれる長期停滞から抜け出すことができるのか注目されます。
このような状況の下、当協会におきましては事業計画で掲げた課題に真摯に取り組み、信用保証業務の円滑化と事業運営の適正化・安定化に努めてまいりました。
勤労者福祉資金融資を幅広く道民に周知すべくラジオCMを実施し、一定の効果を確認することができましたが、利用状況は依然低調で、低所得者の生活安定と福祉向上に資するという役割が十分に発揮されているとはいえません。
事業実績につきましては、計数の多くが下振れする結果となりましたが、事業運営には問題がなく、重要な課題の積み残しもありませんでした。今後も増加が予想される求償権に対し、適切に引当金を充当し万全に対処していきます。
令和5年度の事業を大過なく遂行できましたことは、北海道や市町村をはじめ、各金融機関、労働団体および福祉事業団体等のご協力・ご支援の賜物であり、深く感謝申し上げます。
令和6年度は、長らく続いた「物価も賃金も金利も上がらない社会」から「物価も賃金も金利も上がる社会」へ転換し、持続的成長の起点の年となることが期待される一方、引き続き物価高や円安、人手不足等の影響が懸念され、先行きは不透明な状況にありますが、働く人とその家族が安心して生活できる共生社会の実現に向け、役職員一丸となって、保証機能を通じた社会的役割の発揮に努めてまいりますので、今後とも皆さま方の変わらぬご支援、ご協力をお願い申し上げます。